救急車内で唾を吐きかけられ続けるという地獄

こんにちは、救急科医師の久津(くづ)です( ̄▽ ̄)

40代女性が睡眠薬をオーバードーズ(薬物過量内服)して救急搬送されてきた。その患者は過去にも正座した状態で睡眠薬をオーバードーズし、発見されるまでに8時間近くかかったため左足が腐り、現在は義足となっているという強者である。

今回も例にもれずすさまじい量の睡眠薬を内服しており、呼吸機能すら停止して人工呼吸器をつけICUに入室した。約2日経って人工呼吸器を外したのだが、そこからが地獄。

まだ誤嚥性肺炎の治療が残っていたのだが(よく人は昏睡すると唾液が間違って肺に入り肺炎になる)、彼女はそれが気にくわないらしくICUでひたすらに叫んでいる。

ここを出せーっっ

ヤンママ

酒ーっっ

ヤンママ

死ね露木ーっっ

ヤンママ


かわいそうなのは真面目で頻繁に診察にいっていた研修医の露木だ。頻繁に診察するが故にすっかり名前を憶えられてしまった。

おいっ、露木、てめーどこ隠れてんだよ!?○○○ついてんのかてめーはーーーっ

ヤンママ


ICUにこだまする露木の名前・・・彼は一躍ICUの有名人になってしまった。

そんな地獄が5日間続き、ようやく彼女の肺炎が落ち着いてきた。しかし死への衝動が依然強く、そのまま精神科病院へ転院することが決まった。久津はホッとした。露木もホッとした顔だった。

しかし露木の地獄は続く。ICUからの救急車での転院搬送には通常医師が付き添うのだ。誰が付き添うかは別に決まりはないのだが、すっかり主治医といった雰囲気になってしまった露木に満場一致(露木は除く)で決定した。

だがしかし、彼女も名前を覚えるほど露木に愛着を持ったわけだ。最後くらい優しく接してくれるかもしれない。と思ったがやはり甘かった。

彼女の場合は精神科への入院が医療保護入院といって、本人の同意なく家族と病院の判断で決定している。早く退院して酒を飲みたかった彼女は、当然納得するはずがない。全身を拘束されながら獣のようにもだえ、罵詈雑言を吐いている。移動の間は危なくて鎮静薬もあまり使えないし・・・

同乗する露木の顔は見たことがないくらい青かった。そして帰ってきたときの顔はもっと青かった。狭い救急車内で、拘束され手が出ない彼女が露木にとった行動は“唾をかける”

なんだか言葉に書くとポケモンの技みたいだ。露木もマスクをかぶせようとしたり必死に抵抗したらしいが、抵抗むなしく眼鏡が唾液でべっちょべちょだった。

久津はとりあえず露木を美味しい飲み屋に連れて行ってねぎらうことにした。がんばったな!露木!

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