タクシーで着払い発送された男

こんにちは、救急科医師の久津(くづ)です( ̄▽ ̄)

朝8時、救急外来に突然タクシーの運転手が現れた。

すいませーん、この人お願いできますか?

タクシー運転手


見るとタクシーの運転手は、ぐったりとした若い男を引きずっていた。近づくと物凄いアルコール臭である。急性アルコール中毒だろう。

とりあえずストレッチャーに乗せ、研修医の大熊に診察を始めるように指示をした。久津はタクシーの運転手に状況を聞きだす。

どうも通行人の方この若い男が歩道に倒れているところを発見したらしい。通行人が救急車を呼ぼうとしたところに、丁度タクシーが通りかかり呼び止めたそうだ。そして救急車で行くより早かろうと、どこか大きな病院に連れて行くようこのタクシーの運転手に頼んだらしい。それでうちの病院に連れてきてくれたと。

なんと親切な運転手だろう。久津はひとしきり感動し、お礼を行って立ち去ろうとした。すると呼び止められた。

あのー・・・料金はどうすればよいでしょうか?

タクシー運転手

救急科医 くづ

あぁ、診察代は後日払いでも大丈夫なので、運転手さんがそこまで心配されなくても大丈夫ですよ。
あ、ではなくてタクシー代は・・・?

タクシー運転手

救急科医 くづ

タクシー代・・・?

あれ、送料無料じゃなかった。着払いだった。まぁ当然か。連れてきてくれただけでも十分ありがたい。

 

急いで男性のところに行き、タクシー代を払わせようとしたが、当の本人は完全に意識がない。それどころか持ち物を調べるとiPhoneのみで、財布すらもっていない。

これは困ったことになった。仕方がない。家族に連絡を取って払いに来てもらおう。iPhoneにはロックがかかっていたが、幸い?にも指紋認証ができるタイプだった。大熊に銘じてロックの解除を試みさせる。

だめです!解除できないです・・・

研修医 大熊

救急科医 くづ

えぇ!?困ったな。全部の指でちゃんと試したのか?
あ、足の指はまだでした!いまやります!

研修医 大熊

救急科医 くづ

アホか。やらんでよい。しゃーない。なんとか本人に暗証番号聞け。
うぃっす。起きてくださーい!!わかりますかー!!暗証番号をおしえてくださーい!!!

研修医 大熊


しかし男は唸るだけだ。なおも大熊はベシベシと患者の肩を叩いて起こそうとする。大熊は典型的な体育会系の人間なので、つべこべ考えず同じ作業を続ける。

おーい!暗証番号!!教えてってば!おーい!あんしょーーばんごーーおしえてくださーーーい!!!

研修医 大熊


すごい力で患者の肩を叩き続ける山田。そして患者は顔をしかめて、ついに小さくささやいた。

痛い・・・

患者


もはやヤクザが銀行口座の暗証番号を聞き出そうとしているようにしか見えない。もとラグビー部の大熊のいかつい体つきがそう見せるのだろうか。

 

結局暗証番号は聞き出せず、したがって家族にも連絡が取れず、本人は財布すら持っていないのでタクシー代を払うことは不可能と分かった。タクシーの運転手にそれを説明する。

救急科医 くづ

というわけでちょっと今は難しそうです。目が覚めたら家族に連絡させて、あとで支払いに行かせますから連絡先を教えていただけますか?
えぇ?ちゃんと払ってくれるんですか?わざわざ払いに来るかかなり怪しいですよね。

タクシー運転手


おいこら。一度示した善意は貫かんかい。

だがタクシーの運転手の圧力に負け、結局久津がタクシー代を立て替えた。通行人の方・・・こういう場合はやっぱり救急車呼んでおくれ・・・

 

その後患者は結局昼間で4時間も熟睡し、ようやく目を覚ました。連絡がついた彼女が平謝りし、タクシー代も診察代も無事払ってくれましたとさ。めでたしめでたし?

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