死ぬ場所くらい選ばせてあげなよ

こんばんは、救急科医師の久津(くづ)です。

80代のお爺さんが、動けなくなった、といって救急車で運ばれてきた。

しかしよくよく聞くと、突然動けなくなったもいうよりは、だんだんと弱っていった、というのが実際のところだった。

全身のCT・頭のMRI・血液検査・尿検査・腰椎穿刺…ありとあらゆる検査を行ったが、大きな異常はなかった。つまり老衰である。

 

お爺さんは一人暮らしだった。子供はいない。ヘルパーさんが一日に2回訪問して、訪問看護師が週2回訪問して、往診医が二週に1度診察してなんとか生活していた。しかしそれも限界だ。介護施設へ入所するしかない。

ところがお爺さんは頑なに拒否した。死んでもいいから家に居たいらしい。それどころか、なんで俺は病院なんかにいるんだ?!と文句をたれている。心配したヘルパーさんが救急車呼んだんだよお爺さん…

 

お爺さんはあまりご飯も食べれていなかったから、家に帰ればあと1~2週間で死ぬだろう。それを伝えてもお爺さんは家に帰りたいと言う。

まぁそれならそれでしょうがない。入院して治せる病気もないし、死に場所くらい自分で選んでもよかろう。往診を担当している医師に「死んじゃうと思うけどそのときは死亡診断書書いてね」的な報告書を作成して、介護タクシーを呼び帰る準備を始めた。

 

とするとそこに甥夫婦が到着した。お爺さんを見るなり、こんなんで家に帰せない、なんかあったらどうする、と喚き始める。

別に介護しているわけでもない、仕事を休んで駆けつけるでもない(昼11:00に呼んで、結局仕事の終わった18:00に病院に来た)、何かあるのは当然だ、ゾンビじゃあるまいし永遠には生きられない。本当に、いい迷惑である。

結局甥夫婦がお爺さんを無理矢理説得して、施設に入ることになってしまった。施設が見つかるまではうちの病院に入院となる。

 

お爺さんはすごく不本意そうだった。死ぬ場所くらい、選ばせてあげればいいのに。

浅はかな善意を押し付けるな。枯れた老人の覚悟を挫くな。死から目を背けるな。

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