患者に痛みを

こんばんは、救急科医師の久津(くづ)です( ̄▽ ̄)

40代のフィリピン系の女性が、昏睡状態になった、といって救急車で運ばれてきた。

この女性、名字は日本人で名前は外国名。恐らく日本人と結婚して現在の姓名になったと推測される。しかし一緒についてきたのは名字の異なる50代の男性だった。友人だという。なんだか怪しい雰囲気である。

研修医の露木が診察に取り掛かる。露木は優しい性格の男で、仕事は少しゆっくりだがいつも丁寧な診察をする。その露木が一通り診察・検査を行ったが、特に異常がないので首を傾げている。

露木「くづ先生、確かにJCS300なのですが頭のCTも血液も髄液も薬物反応も以上ありません。これはいったいどういうことなのでしょう・・・」

JCS300、とは意識状態を表す医学用語で、強い痛み刺激を与えてすらピクリとも動かないことを言う。

くづ「そもそも本当にJCS300なのか?もう一回痛み刺激を与えてみろよ」

露木「えっ、はい・・・」

そういって露木は胸骨という胸のど真ん中にある骨に拳をあて、グリグリと刺激を与える。患者はピクリとも動かない。

くづ「どれどれ」

久津も胸骨に拳を当てる。体重を乗せてグリグリとする。ピクリともしない。ふむ。なかなかに手ごわい。

次にボールペンを取り出し、患者の爪の上に乗せる。そしてペンを爪にぎゅーっと押し付ける。これは相当に痛いはずだ。

すると、動きこそしなかったものの、顔が徐々に赤くなってきて、涙がツーッとこぼれ落ちた。そして昏睡状態だったはずの患者が目を見開いて怒鳴りだす。

患者「イッッッタイヨッッッ!!!」

久津はうぶな露木と違ってスレているので最初から見抜いていた。本当に昏睡していれば舌の筋肉まで緩むので、それが喉につっかえてひどいイビキをかいたり、呼吸のパターンがおかしくなるのが普通なのだ。

 

そこから患者は本性を発揮し始めた。連れの男性に「ハニー助けてクルシイの」と懇願してみたり、男性が居なくなったら居なくなったで露木に向かって「アナタ可愛い顔シテルワネェ」と色目を使ったり好き放題であった。

久津は恨まれたが露木はまた一つ成長した。めでたしめでたし。

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