耳と鼻から虫が這い出てきたと言い張る男性患者

こんにちは、救急科医師の久津(くづ)です( ̄▽ ̄)

50代の男性が、耳と鼻から虫が這い出てきた、胃カメラで取ってくれ、といって救急外来にやってきた。カルテを見ると過去に統合失調症でうちの病院の精神科に通院していたことが分かった。おそらくそれによる妄想だろう。

くづ「どのような虫なんですか?」

男性「幼虫みたいな白いヤツです。牙があってお尻から毒を吹くんです。」

くづ「鼻から出てきたということですが写真か何かとりましたか?」

男性「すいませんトイレに流してしまいました。」

くづ「そうですか・・・ところで最近は精神科の方の通院はされていますか?」

男性「また精神科の話ですか!それとこれとは別問題なんです!私は息子を虫に腹を食い破られて亡くしているんです!もうすぐ脳に達して私も死んでしまう!あぁ、ほら今もお腹で虫が動いてますよ・・・この虫はすごい社会問題にもなっているし知っているはずでしょう!!」

これは困ったことになった。明らかに精神科的な治療が必要だが、本人が精神科疾患としての対応を拒んでいる。しかも天涯孤独で彼の代わりに意思決定してくれる人はいない(両親は死別、妻とは離縁)。

本人が拒否していても強制入院させる方法もあるのだが、それは精神疾患によって自傷行為を行ったりや他人に害を与える危険性がある場合に限るので使えない。

 

困りに困った久津は院内の精神科医に相談してみた。

精神科医「じゃあ虫下しってことにしてジプレキサ(抗精神病薬)を飲ませちゃいましょう。」

くづ「え?さすがに薬の内容を偽って飲ませるのはまずくないですか?」

精神科医「本人にとっての虫は消えると思いますよ。だから本人にとってはジプレキサは虫下しに他ならないです。嘘にはなりませんよ。」

なるほど。精神科医の柔軟さに脱帽した。結局ジプレキサを内服して患者は徐々に落ち着きを見せ、「虫の動きが少し収まってきたみたいです」とかなんとか言って帰っていった。明日かかりつけの精神科を受診することもなんとか約束させた。

 

ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ。そのすべてに対応できる救急科医を目指して、毎日が勉強だ。

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