コードホワイト、AEDで威嚇する患者と、聴診器で応戦する医者

こんばんは、救急科医師の久津(くづ)です( ̄▽ ̄)

「コードホワイト、コードホワイト、A棟2階です。コードホワイト、コードホワイト、A棟2階です」

勤務中、全館放送でアナウンスが流れた。

コードブルーとは、患者が急変したときの緊急招集のことである。手が空いているスタッフは医師・看護師に関わらず誰であれ駆けつける。当然このような急変に最もよく対応できるのは救急科医であり、全力で走って一番にたどり着き、全体の指揮をとるのが望ましい。

久津は「コード・・・」の時点で走り出し、走りながら向かうべき場所を聞いた。幸いなことにA棟2階は救急外来のすぐ近くで一番にたどり着いた。

救急科医 くづ

病室はどこですか!?

そこにいたスタッフがすぐに案内してくれたが、その場所は病室でなく廊下の突き当りだった。

しまった、一番にたどり着いてしまった、と久津は思った。

 

廊下の突き当りで、なぜかAED(心配蘇生のために電気ショックを与える機械)をもった患者が、大声で叫んでいた。目の焦点が合っていない。明らかに錯乱している。

コードブルーではなかった。コードホワイトであったのだ。コードホワイトとは、医療スタッフが患者に暴力を振るわれたとき、鎮圧するために人手を集めるための緊急招集である。これは主に守衛や事務が集まって対応する、とされている。

チラッと後ろを振り返ると、2名の看護師しか集まっていなかった。守衛といっても警察OBのおじいちゃん達なので、いつも到着するのはだいぶ経ってからなのだ。

患者と対峙しながら、状況を看護師に聞く。患者は脳腫瘍で入院しており、ここ数日だんだんと行動がおかしくなっていたという。

救急科医 くづ

さすまた持ってきて!

不幸なことに、こんなことにも経験豊富な久津は、各病棟に一つずつさすまたが配備されていることを覚えていた。

さしあたってさすまたが来るまでは、患者が他の病室に入り込まないように封じ込めておかなければならない。患者の持っているAEDは、そのまま投げても脅威だし、間違って放電でもしたらそれこそ大怪我である。

首にかけている聴診器を手に取る。これをヌンチャクのように使えば患者の持っているAEDくらい叩き落とせるかもしれない。4万円のリットマンの聴診器は惜しいが、背に腹は代えられぬ。

するとそこに研修医の大熊が駆けつけてきた。大熊は頭はイマイチだが体はよく動く、という典型的な体育会系の人間だ。久津は大熊にも状況を説明する。

それにしてもさすまたが全然届かない。ふと患者は叫ぶのを止め、ぶつぶつ言いながら歩き始めた。ヤバい、このままでは他の患者もいる病室に入ってしまうかもしれない。

しかたない。さらば聴診器・・・

うおおおおおぉぉぉぉぉ

研修医 大熊


覚悟を決めたそのとき、突如大熊が患者に向かってタックルをした。おバカな大熊はもしかしてAEDがどんなものか知らなかったのかもしれない。だが結果的にはファインプレーだった。もんどりをうって倒れた患者の手にあるAEDを、久津はすかさず蹴り飛ばした。

救急科医 くづ

なんでもいい、鎮静薬!

すぐさま看護師が手渡してきた。言われる前に準備していたようだ。なぜその手際の良さでさすまたを持ってこないのだ・・・とも思ったがそのまま患者にブスッと筋注した。

大熊に取り押さえられながら患者は次第におとなしくなり、無事もとの病室に運ぶことができた。

いくつか反省が残った。さすまたと守衛の到着がとにかく遅かった。さすまたは滅多に使わないからどこに仕舞ってあるか分からなかったらしい。守衛のおじいちゃんは呑気にエレベーターで来ようとして、混んでいたため時間がかかったとのこと。

とにかく誰も怪我をしなくて何よりである。大熊に何か奢ってやらねば。

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