享年1ヵ月

こんばんは、救急科医師の久津(くづ)です。

生後1か月の乳児が、呼吸していない、といって救急車で運ばれてきた。救急隊員が到着した時点ですでに心臓は止まっていた。

救急車が病院に到着する。救急隊員が小さな体を心臓マッサージしながら初療室に運び込む。錯乱した母親が乳児にすがりつこうとする。処置の邪魔になるので、看護師がそれを羽交い絞めにして引き離す。

 

小さな鼻から、血と母乳の混合物が噴き出す。ただちに気道にチューブを挿入し、吐物が肺に入らないように処置をする。そのチューブの太さはわずか4mmである。

強心剤を注射する必要がある。体が小さすぎて点滴の針は入らない。足の脛の骨にドリルで穴をあけ、そこから薬剤を投入する。

血液検査をしようにも血管に針が刺さらない。踵を切って、湧き出た血液で検査する。

 

あらゆる努力を試みた。だが蘇生はできなかった。小児が心肺停止した場合、その救命率は限りなくゼロに近い。

母親にもう蘇生は無理だと告げる。心臓マッサージと人工呼吸を止め、死亡確認をしようとするが、母親はただ泣き叫ぶのみである。

けいちゃん、けいちゃん、がんばって・・・

母親


気道に挿入した管と、脛の骨に入れた針を抜き、乳児を母親に抱かせる。

 

その日は寒かった。寝ている乳児に、よかれと思ってタオルケットやら何やらをたくさんかけたらしい。息が止まっていると気づいたときには、タオルが顔にかかっていたらしい。もしかしたら窒息したのかもしれない。

そんな母親の嗚咽交じりの懺悔を1、2時間は聞いた。気づくと乳児の瑞々しいはずの肌は乾燥し、ひび割れていた。それが、乳児の生命がすでに失われていることを如実に物語っていた。

救急科医 くづ

お母さん、残念ですが・・・

死亡時刻を告げる頃には、母親の涙は尽き果て、ただ茫然と頷くのみであった。

小さな魂と、その母親に安らぎあれ。

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